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吉澤は液体窒素のボンベを運び出そうとしていた。
と、そのとき、メンテナンスハッチの扉が勝手に閉まったのだった。
「あっ…しまった!」
そう、扉が“閉まった”のである。
しかし今の吉澤にはそんなダジャレはどうでもよかった。
扉は内部から開けることができない仕様だったのだ。
吉澤は扉にはりつき、なんとか開けようと試みたがダメだった。
厚さ200ミリの耐高熱特殊合金の扉を人間が素手で破壊することは不可能だった。
「やっちまったぁ…。所長が戻ってくるまでここで待つしかないか。しかし、なぜこんな所に入ったのかと詰問されるのは間違いないな…」
かき氷を食べたいあまりに液体窒素を盗み出そうとしたことが発覚すればただでは済まされない。
「まいったな…」
そのときである。
吉澤の背後からニャアという声が聞こえた気がした。
振り向けばそこにはアマガエルが1匹ちょこんと座っている。
「うわ、びっくりしたぁ。しかも猫じゃなくてカエルかよっ。ていうか、なんでこんなところにカエルが!?」
カエルが言った。
「驚かせてすみません」
「すみませんじゃないよ、なんでカエルがいるんだよ!」
「まあ落ち着いて私の話をきいてください」
「落ち着いてる場合じゃないんだけど、自力で脱出できる見込みもないんで仕方がないからきくってことでもいいのか?」
「かまいません」
カエルはひとつ咳払いして続けた。
「あなたは今、半死半生の状態にあります。つまり死んでるとも生きているとも言えない状態にあります」
「なんじゃそりゃ」
「確率の話です。あなたが死んでいる確率は50%、生きている確率も50%です。あなたが誰かによって観測されるまで生死は確定しません」
「…いったいこのカエルは何を言ってるんだ…」
「私はじつは10年後の未来からやってきました。衛星軌道上で起きた重力崩壊によって時空に特異点が生まれ、そこに落ち込んだ私はここにやってきてしまったのです」
「事象の地平面上では質量が無限大になって時間が止まるんじゃなかったのかよ?」
「それはあくまでも観測者の見かけ上の話です。特異点に吸い込まれた私はクォークレベルにまで分解され、時間を逆流し再構築されました」
「それは良かったな」
「ええ、不幸中の幸いです。…じつは私、時空を超えて再構築される間に、死んだ私の祖母に会いまして、私が過去にさかのぼってやるべきことを告げられたのです」
「それはいったい…?」
「10年後、日本は怪獣の襲撃によって壊滅的な打撃を受けます」
「それを俺に伝えにきたのか?」
「いいえ、それを阻止するために来たのです」
「阻止? どうやって? 怪獣の仕業なんだろ?」
「怪獣襲撃の原因を作ったのは、あなたなんです」
「え? 俺? なんで?」
「バタフライ効果というのを知っていますか?」
「知らん、そんなもん」
「あなたがかき氷を今日食べることで、10年後に怪獣が目覚めてしまうんです」
「んなアホな! …それで俺の『かき氷製造作戦』を邪魔しに来たというんだな!?」
「違います。かき氷はどうでもいいんです。あなたそのものを消滅させるために私は未来から来たのです!」
カエルの体が見る見る大きくなった。
人間と同じサイズになったカエルは口から長い舌を伸ばし、吉澤の首に巻きつけて力一杯締めつけはじめた。
「ぐはっ、やめろ! やめてくれ! 死ぬっ、助けてくれぇ!!」
大声を上げて吉澤は目を覚ました。
隣の席の上司が驚いて吉澤のほうを見る。
「おい、どうしたんだ?」
「あ…楢崎課長。すみません、ちょっとウトウトして変な夢見ちゃって…」
「疲れてるようだな。今日はもう帰って休め」
「はあ、そうします…」
「私もそろそろ上がるか。娘がご飯の支度をして待ってるからな」
「ああ恵美さんですか」
「今年大学を卒業するんだよ」
「音大でしたっけ?」
「ああ。卒業したら海外で勉強したいんだとさ」
吉澤はふと思いついたことをきいてみた。
「課長、平行世界って信じます?」
「ん? ……またいつものSFネタかね。君もいつまでもそんなくだらんことを言っとらんで早く結婚したまえ」
「はあ……いちおう、努力はしてみます…」
帰路を歩く吉澤の頭上にはベガとアルタイルが輝いていた。
(今日は七夕だったっけ…。どうか二度と作者が暴走して変な話を書きませんように…)
終わり
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ご精読ありがとうございました。
行き当たりばったりのアドリブ小説ですみません…。
ちなみに11.85はとくに意味がありません。とりあえず意味深な数字を出しておけっていうだけのものです。
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